お知らせ

2024.03.18

イベントレポート

札幌AI道場 第二期 成果発表会

2024年2月26日(月)、「一般社団法人日本ディープラーニング協会 」(JDLA)と共催で、AIの最新動向や活用事例を紹介する「Sapporo AI Connect 2024 ~JDLA×札幌AI道場~」を開催しました。 イベントの第一部では生成AIの効果的な活用に向けて、JDLA会員のソリューションや活用事例を多数紹介いただき、第二部では実践的AI人材育成・実証プログラム「札幌AI道場 第二期 」の成果発表会を実施。門下生や課題提供企業など関係者を含む約300名が来場しました。

1.イベント概要

【日時】2024年2月26日(月)13:00~20:45
【会場】札幌市民交流プラザ3階 クリエイティブスタジオ(札幌市中央区北1西1)

2.第一部「JDLA Connect in Sapporo」

第一部は、岡田 隆太朗氏(JDLA理事 兼 事務局長)のオープニングトークから始まり、JDLA会員企業である株式会社調和技研と株式会社Elithより、企業における生成AI活用に関して講演いただきました。

講演の中では、イベント参加者からの質問をリアルタイムで受け付け、回答していた。

 

講演の後は、会員企業4社よりAI開発事業に関する事例紹介が行われました。

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事例紹介の後は、各ブースにて登壇企業との交流の場が設けられ、参加者の皆様が熱心に情報交換をしていました。

○登壇企業

・アッペンジャパン株式会社
・アマゾン ウェブサービス ジャパン合同会社
・株式会社Elith
・株式会社調和技研

3.第二部「札幌AI道場 成果発表会」

○開会挨拶

冒頭、第二部の開催概要やAI人材育成に係る今後の展望などについて札幌市の石川副市長からお話があり、成果発表会がスタートしました。

○札幌AI道場 活動紹介

はじめに、道場の総師範である中村 拓哉氏(札幌AIラボ 事務局長 / 株式会社調和技研 代表取締役)より、札幌AI道場の取組についての説明や、今期の活動内容、AI道場にかける想いなどが述べられました。

―人口減少が進む日本において、AIの活用はますます重要になっているが、エンジニアは依然として不足。AI道場で、単に技術を習得するだけではなく、社会への貢献意識と自立自走の能力を持った人材を育てていくことで、より良い地域社会を実現したい。(中村総師範)

※AI道場の取組、今期の活動概要についてはこちらを確認ください。

○パートナーセッション

続いて、道場の運営に協力いただいたパートナー企業からの発表が行われました。 東京エレクトロン株式会社からは半導体開発における技術動向やAIを用いた開発事例、半導体製造企業が求めるエンジニア像についてお話がありました。

東京エレクトロン(株)デジタルデザインセンター AD1部  部長代理  Director 鈴木 淳司氏

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社からはAWSのソリューションや、個人・学生を対象とした人材育成、LLM開発企業・スタートアップを対象とした支援制度などAI分野における様々な活動についてご紹介いただきました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
パブリックセクター シニア事業開発マネージャ―(Startup) 岩瀬 霞氏

 

パートナーセッションの後は、エンジニアコースの各チームの代表者より、それぞれが取り組んできたプロジェクトの概要と成果が発表されました。

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エンジニアコースとは

実課題に基づく課題解決型AI人材育成(PBL)とAI開発に向けた実証(PoC)を同時に行うプログラム。門下生(参加者)は、師範(指導者)のもとで、課題提供企業が抱える実課題を題材としてAI開発に向けた実証を行うことによって、座学中心の授業では体験できない、実際の開発プロセスの経験を得ることができる。課題提供企業は、無償で、自社に適したAI導入の把握、AIモデルの試験的な構築をすることができる。 今期は選考を経て29名の門下生と5社の課題提供企業を選定。門下生は5つのチームに分かれて、約5ヶ月間の間、AIシステム開発に係る一連のプロジェクトに取り組んできました。

○エンジニアコース成果発表(チームA)
課題提供企業:住鉱国富電子株式会社 / プロジェクト:ウェハの枚数検知

■演習の概要:

住鉱国富電子株式会社は、ウェハ(半導体に用いる電子部品)等の製造を行っている企業。製造工程で複数回実施しているウェハの枚数確認をAI化することで、人員コストの削減や計測ミス防止、処理速度向上等の実現を目指す。

■取組内容、結果:

様々な手法や設定するパラメータの比較検証を経て、テスト画像を対象にした検証において、枚数検知精度が9割程度となるAIの構築に成功。

■師範、課題提供企業からのコメント:

―今後実用ができる見込みがある成果が出た。エンジニアとしての本来業務をこなしながら、この成果を出せたことは大変素晴らしい。(竹田師範)

―第一期の成果発表会に参加したことをきっかけとして、AI道場に興味を持ち、今回参加させていただいた。今回の取組を通じて、自身の業務にどのようにAIを活用できるかイメージを掴むことができたし、成果としてもとても素晴らしいものであった。とても感謝している。(課題提供企業)

 

エンジニアコース成果発表(チームB)
課題提供企業:国営 滝野すずらん丘陵公園 滝野管理センター / プロジェクト:滝野すずらん丘陵公園の動物自動判別

■演習の概要:

滝野すずらん丘陵公園では監視カメラによって多くの動物を撮影しているが、そのデータを有効活用できていないことが課題。AIを活用して動物の識別を行ったうえで、「動物の種類」「出現時間・場所」といった情報の見える化を目指す。

■取組内容、結果:

物体認識AIを用いて動物識別モデルを構築し、全動物で正解率が9割以上となるAIの構築に成功するとともに、マップやグラフを用いた情報の見える化にも成功した。

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師範、課題提供企業からのコメント:

―今回、高い精度のシステムを構築できた要因は、門下生の努力に加えて、良質な録画データが大量にあったことにある。門下生には「もしも今回、課題提供企業から録画データが提供されず、自身で用意する必要があったとしたら、どのように進めることができたか」という点を考えてもらい、今後、自社のAIプロジェクトを進める際に活かしていただければと思う。(入澤師範)

―今回の活動を通じて、自身が所属しているアナログな業界においても、AIを活用することができるということが判り、大変勉強になった。今回の成果は色々なかたちで活用させていただく。(課題提供企業)

エンジニアコース成果発表(チームC)
課題提供企業:株式会社ホッカン / プロジェクト:海苔の品質評価

■演習の概要:

株式会社ホッカンでは、海苔製品の製造を行っている。海苔製品の目利きには属人性が高いことや評価指標が確立されていないなどの課題があることから、AIによって品質評価を行うことで、これらの課題の解決を目指す。

■取組内容、結果:

焼き海苔を撮影し、その色をもとにした品質評価の仕組みを検討。複数の手法を試しながらAIシステムの構築を進めたが、いずれの手法でも4割に満たない正解率となった。その結果を受けて、AIに学習させた海苔の画像データに「中品質の海苔が多く、低品質・高品質の海苔の画像が少ない」「ピントぼけしているものがある」などの問題があったことが正答率の低さに繋がったと分析し、必要な画像データやその撮影方法などについて、今後に向けた改善策を課題提供企業に提案した。

■師範、課題提供企業からのコメント:

―今回はPoC(概念実証)を実施したけれど成果が出なかった。試してみるまで成果が出るか判らないAI開発では、意外とよくある事例。高い精度は出なかったものの、門下生は今回の取組を通じて多くの知見を得ることができたし、課題提供企業についても今回の結果を踏まえて、実際のシステム開発に広げていくことができるだろうと考えている。(庄内師範)

―今回は残念ながら期待した精度は出なかったものの、今回の取組を経て、AIに対する理解が明確となり、興味を持つきっかけとなった。海苔の品質評価システムは、今後の業務実施において重要なものになると認識しており、引き続き本格実装に向けて取り組んでいきたいと考えている。(課題提供企業)

エンジニアコース成果発表(チームⅮ)
課題提供企業:株式会社丸亀 / プロジェクト:鮭の異物検知

■演習の概要:

株式会社丸亀は、鮭の刺身や焼き鮭など、鮭製品の加工・販売を行っている企業。製造工程では、鮭の鱗や骨など透明で視認しづらい異物の除去が必要となるため、AIを用いて異物検知を行うことで、作業員の負担軽減及び品質向上を目指す。

■取組内容、結果:

比較検証した複数の手法において、正解率9割弱のAIシステム構築に成功。他企業においても今回と同じような課題を抱えていると考えられることから、引き続き企業と連携して更なる精度向上を目指し、業界全体に貢献したいという今後の展望が語られた。

■師範、課題提供企業からのコメント:

Dチームは、ゲーム会社に勤めている者や衛星のデザインを担当している者など、色々な素養がある門下生が集まっており、よくバランスがとれていたと思う。また、通常のシステム開発とAI開発は進め方には異なる点が多く、そこに苦労していたようだが、それも含めて経験になったと思う。(堀米師範)

AI活用による品質向上や人的コストの削減には大変期待しているので、引き続き取り組んでいきたい。(課題提供企業)

エンジニアコース成果発表(チームE)
課題提供企業:株式会社宮田自動車商会 / プロジェクト:自動車部品の同時交換推薦

■演習の概要:

株式会社宮田自動車商会では、カーディーラーや整備工場などを顧客として、外国車含む様々なメーカーの自動車部品を調達・販売している。自動車部品を交換するにあたって、複数種類の部品を同時に交換しなければならないケースが多く、顧客からの発注要望を受けた際に不足部品の提案を行う必要があるが、その提案に抜け漏れが生じる場合がある。AIを活用して発注内容をもとにした不足部品の検討を行うことにより、提案の抜け漏れ防止を目指す。

■取組内容、結果:

過去10年間以上の取引データをもとに分析を行い、同時交換を行う部品の候補を回答するアプリケーションを構築。過去取引において同じ伝票で処理されていた部品同士など、関連性が高いものについては8割程度の成功率となった。関連性が低い部品についてはChatGPTの活用を検討したが、「この部品は同時購入される可能性があるか?」「車検時に交換される可能性があるか?」といった質問に対する正答率は3~6割程度に留まった。その結果を受けて、本格導入に向けた更なる精度向上や、既存システムとの連携など今後の展望について話があった。

■師範、課題提供企業からのコメント:

―この課題だけ他の4件と異なり、画像を用いたものではない。どういう手法を使えば良いのか、どういった調査をすれば良いのか、そういった検討から取り組む必要があり、難しい案件だったと思う。AI開発らしくない案件ではあったが、今回のようなデータの調査や分析の作業はAI開発でも必須のものとなるので、今回の経験を活かして、AI開発に取り組んでいってもらえればと思う。(石岡師範)

―色々課題も残ってはいるが、AI開発に向けて一定の方向性や分析を進めてもらうことができ、大変感謝している。今回の成果を踏まえて、既存の受発注のシステムにAIをうまく組み込んで活用できるようにしてきたいと考えている。(課題提供企業)

○ユースコース・スピンアウトセッション

高専生など学生を対象としたユースコースでは、座学や実習に加えて、AIを活用した新しいソリューション案の検討、実装を行ってきました。本セッションでは、苫小牧高等専門学校の学生が考案したソリューションが発表されました。

■ソリューションの概要:

北海道コンサドーレ札幌の試合来場者の満足度向上を目的とした、サポーター全員で作り上げる体験型応援アクティビティ「FanMagic」。カメラで撮影した人物の動きをAIで解析して3Dモデル化することで、仮想空間でサポーター×サポーターのダンスショーを行ったり、北海道コンサドーレ札幌のマスコットキャラクターであるドーレくんなどに模して踊ることが可能。この映像をハーフタイムなどに流すことで、他のサッカーチームでは体験できない、サポーター参加型のアクティビティが実現できる。

■北海道コンサドーレ札幌からのコメント:

―今回の取組を通じて、いまの若い方がどのようなコンテンツに興味を持つのかを知ることができたのは、大変参考になった。

例えば、今回提案いただいたソリューションを活用して、ドーレくんに模したサポーターが躍る映像をSNSに流すなどしても面白いかもしれない。

―ここまでアイデアを磨き上げてくれて、想像以上の内容だった。是非、さらに磨きをかけていただき、実用化されることを楽しみにしている。

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○クロストーク

道場最高師範の川村 秀憲氏(札幌AIラボ ラボ長 / 北海道大学大学院情報科学研究院 教授)、道場総師範の中村 拓哉氏、岡田 隆太朗氏(JDLA理事 兼 事務局長)の3名に登壇いただき、札幌AI道場に対する講評や今後への期待に加えて、昨今のテクノロジーの発展を踏まえたコメントをいただきました。

AIそのものを使いこなすことよりも、誰も気づいていない課題を発掘してきて、その解決のために手を動かすという体験が大切。AI道場は、実践的でありながら気軽に課題解決のプロセスを経験できる点が素晴らしい。(川村最高師範)

2期目とは思えない程よくできた仕組みになっている。昨年度の成果発表を聞いて課題を提出された企業がいるなど、良いサイクルが形成されている。(岡田氏)

―外国から来てくれる高度外国人材はいるものの、定着しないケースもあると聞いている。札幌・日本のファンになってもらい定着率を上げるためには、コミュニティを形成することが重要。そう考えて今期からグローバルコースを新設した。(中村総師範)
―素晴らしい取組。ここまでやるとプログラムとして厚みが増す。地域におけるIT人材育成、高度IT外国人材集積の苗床になることを期待している。(岡田氏)

―ここ1年間の間における生成AIの進歩など、テクノロジーは著しく進歩している。間違いなく世界はどんどん変わっていく。今の子供たちは物心が着いたころから生成AIが使える。現在のエンジニアたちは20年後の将来、そのような世代と一緒に仕事をしていかなければならない。(川村最高師範)
―いつから活用しようと様子を見るのではなく、いま活用しなくてどうする。AIを活用しないことそれ自体がリスクである。(岡田氏)
―技術が日々変わっていくなか、受け身になる側じゃなくて、技術を活用していく側に回らなければならない。(中村総師範)

○クロージング

第2部の締めとして、再び川村最高師範に登壇いただき、関係者への激励や、プログラム全体を通じた総評をいただきました。

―課題提供企業の皆様は今回の活動を通じて、AIを活用すると面白いことができる、時には失敗することもあるなど、様々な気づきを得られたと思う。是非、こういった取組を知り合いの企業に広げていただき、参加に繋げて頂ければと思う。また、今回だけの取組として終えるのではなく、本格実装に向けた次のステップに進んでいっていただきたい。

―門下生の皆様について、幸いにもAI技術に関する様々な論文は無料で読むことができる。また、今はChatGPTなどを活用することで、海外の論文であっても翻訳のアシストを受けながら読むことができる。是非、そういったものを活用しながら、次のステップに学びを進めていってもらいたい。

―師範の皆様についても、今回は他人にものを教える良い経験の場となったことと思う。後輩や同僚など、今後も教える機会はいくつもあると思うので、是非今回の経験を活かしてもらいたい。

AI道場の取組を通じて、道外からAI開発案件を受注できたり、道内の課題解決ができるようになると期待している。今期の取組は大成功だったと考えている。来期の開催に向けて、また皆さんで頑張っていきましょう。

○おわりに

札幌AIラボ 第2期は、成果発表会にお越しいただいた方々を含め、多くの関係者の協力によって、無事に盛況のうちに終えることができました。この場をお借りして、改めて感謝を申し上げます。

札幌AIラボでは、2024年度に開催する札幌AI道場(第3期)に向けた準備を進めて参ります。門下生や実証課題の公募情報などについては、詳細が決まり次第、改めて当ホームページ等で告知させていただきます。札幌市におけるAI人材の育成やAI開発の促進などを目指し、引き続きご協力をお願いします。

最後までご参加いただいた皆様、長時間お疲れ様でした!!

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