2025.07.04
イベントレポート
札幌AI道場 第3期 成果発表会
2025年2月14日(金)、札幌市中心部にある札幌市民交流プラザ3階クリエイティブスタジオ(中央区北1西1)を会場として、実践的AI人材育成・実証プログラム「札幌AI道場 第3期 」の成果発表会を開催しました。門下生や課題提供企業、関係者のほか、道場に関心を持つ一般の方などを300名を超える方々が来場しました。
1.イベント概要
【日時】2025年2月14日(金)15:30~20:45
【会場】札幌市民交流プラザ3階 クリエイティブスタジオ(札幌市中央区北1西1)
2.「札幌AI道場 成果発表会」
○開会挨拶
冒頭、第3期の開催概要やAI人材育成、AI産業の集積に係る今後の展望などについて札幌市の秋元市長からビデオメッセージがあり、成果発表会がスタートしました。
○札幌AI道場 活動紹介
はじめに、来賓である株式会社北洋銀行の越田 雄三氏(執行役員 公金・地域産業支援部長)より、地域経済の発展や人材育成において、地域に根差す金融機関としての役割を果たしていきたいとの挨拶がありました。
続いて、道場の総師範である中村 拓哉氏(札幌AIラボ 事務局長 / 株式会社調和技研 代表取締役)より、札幌AI道場の取組についての説明や、今期の活動内容、AI道場から教育現場への拡がりなどが述べられました。
※AI道場の取組、今期の活動概要についてはこちらを確認ください。
○トークセッション
続いて、道場最高師範の川村 秀憲氏(札幌AIラボ ラボ長 / 北海道大学大学院情報科学研究院 教授)、道場総師範の中村 拓哉氏、に登壇いただき、トークセッションが行われました。
○ユースコース・スピンアウトセッション
高専生など学生を対象としたユースコースでは、座学や実習に加えて、AIを活用した新しいソリューション案の検討、実装を行ってきました。本セッションでは、苫小牧高等専門学校の学生が考案したソリューションが発表されました。
■ソリューションの概要:
企業キャラクターは消費者や社会に対して、企業の知名度を上げる効果があることを前提に、企業キャラクターの認知度向上を目的として、姿勢推定AIを用いてリアルタイムでキャラクターと触れ合いながら写真を撮影できるサービスを開発。撮影した写真はパズル化され、世界に一つだけのパズルとなってプレイ可能で、環境広場さっぽろで実施したテストでは、利用者の約9割が楽しめたという結果になり、関心を集めました。
ユースコース・スピンオフセッションの後は、エンジニアコースの各チームの代表者より、それぞれが取り組んできたプロジェクトの概要と成果が発表されました。
エンジニアコースとは
実課題に基づく課題解決型AI人材育成(PBL)とAI開発に向けた実証(PoC)を同時に行うプログラム。門下生(参加者)は、師範(指導者)のもとで、課題提供企業が抱える実課題を題材としてAI開発に向けた実証を行うことによって、座学中心の授業では体験できない、実際の開発プロセスの経験を得ることができる。課題提供企業は、無償で、自社に適したAI導入の把握、AIモデルの試験的な構築をすることができる。
今期は選考を経て39名の門下生と5社の課題提供企業を選定。門下生は5つのチームに分かれて、約5ヶ月間の間、AIシステム開発に係る一連のプロジェクトに取り組んできました。
○エンジニアコース成果発表(チームA)
課題提供企業:株式会社伊藤組 / プロジェクト:ロードヒーティングのエネルギーロス削減
■演習の概要:
株式会社伊藤組は、ビル・不動産事業を行っている企業。所有ビルのロードヒーティング運用に課題があり、AIで気象データと現場の画像を分析し、自動でON・OFFを制御するシステムの実証実験に取り組む。
■取組内容、結果:
監視カメラ画像を用いた画像分析と気象予報データを用いた統計処理を組み合わせることで、ロードヒーティングのON・OFFを予測するAIの作成に成功した。
○エンジニアコース成果発表(チームB)
課題提供企業:一般財団法人札幌市環境事業公社 / プロジェクト:トレーニング評価の標準化
■演習の概要:
札幌市環境事業公社では、事業系一般廃棄物の収集運搬などを行っている。ゴミ袋の容量を熟練者が目視で判断しているが、熟練者以外でも正確な容量を計測する手法を必要としており、カメラとセンサーを用いてゴミの容量を正確に推測するシステムの実証実験に取り組む。
■取組内容、結果:
測定対象が適切に配置されているテスト環境であれば、現場作業員の測定体積値との誤差が10%以内に収まるAIの作成に成功した。
○エンジニアコース成果発表(チームC)
課題提供企業:合同会社ソフトテニスアカデミー /プロジェクト:トレーニング評価の標準化
■演習の概要:
合同会社ソフトテニスアカデミーでは、運動・食事・ピラティス・マッサージ・整体に特化したパーソナルトレーニングジムを運営している。トレーナーによる姿勢評価にばらつきがあり、説明も不十分な場合があることから、評価のばらつきを現象させるとともに、結果を可視化し顧客に分かりやすく提示する姿勢評価システムの実証実験に取り組む。
■取組内容、結果:
「腰」、「肩」といった部位ごとに姿勢評価を自動で行うAIの開発に成功した。
○エンジニアコース成果発表(チームⅮ)
課題提供企業:株式会社フソウ / プロジェクト:浄水場管理の効率化
■演習の概要:
株式会社フソウは、施設と管路を一貫して手掛ける総合水インフラ企業。取水量管理において経験豊富な管理者に依存しており、経験に左右されない管理を目指して適切な排水量・取水量を自動計算するシステムの実証実験に取り組む。
■取組内容、結果:
排水量については、誤差5%未満の高精度で予測可能なAIの作成に成功した。また、取水量についても、時間ごとの排水量変更に対応したアルゴリズム作成に成功した。
○エンジニアコース成果発表(チームE)
課題提供企業:株式会社北海道アルバイト情報社 / プロジェクト:就活生を支援する文章作成サポート
■演習の概要:
株式会社北海道アルバイト情報社は、Web求人媒体の運営や求職者向けの就職支援等を行っている企業。自己PR文や志望動機の作成に苦慮する就活生も多く、適切なサポートが必要であることから、生成AIを活用し、文章を評価・添削するサービスの実証実験に取り組む。
■取組内容、結果:
求職者の情報や、応募先企業の情報とあわせて入力することで、自己PR文の評価を自動生成するAIの作成に成功。プロの指導者による評価と比較して、全体的な評価傾向は概ね一致したことから、作成したAIによる評価が一定の信頼性を持つことが確認できた。
○グローバルコース成果発表
札幌市内企業等に勤務する外国人材などを対象としたグローバルコースでは、エンジニアコースCチームと同じ合同会社ソフトテニスアカデミーが提供した課題をテーマに取り組みましたが、トレーニング前後の姿勢比較が可能なシステムを作成するなど、同じ課題に対して異なる着眼点で課題解決に取り組みました。
○クロージング
第1部の締めとして、再び川村最高師範に登壇いただき、プログラム全体を通じた講評をいただきました。
○おわりに
札幌AI道場第3期は、成果発表会にお越しいただいた方々を含め、多くの関係者の協力によって、無事に盛況のうちに終えることができました。この場をお借りして、改めて感謝を申し上げます。
2025年度に開催する札幌AI道場(第4期)の詳細はこちらをご覧ください。札幌市におけるAI人材の育成やAI開発の促進などを目指し、引き続きご協力をお願いします。
最後までご参加いただいた皆様、長時間お疲れ様でした!!