2026.05.14
イベントレポート
札幌AI道場 第4期 成果発表会
2026年3月3日(火)、札幌市中央区の札幌市民交流プラザ(3階クリエイティブスタジオ)にて、「札幌AI道場・第4期」の集大成となる成果発表会を開催いたしました。
当日は、これまで研鑽を積んできた門下生をはじめ、実証課題をご提供いただいた企業の方々、指導にあたった師範陣が集結いたしました。さらに、本プログラムに関心を寄せる一般来場者も多数お迎えし、総勢220名を超える熱気に包まれたイベントとなりました。
1.イベント概要
【日時】2026年3月3日(火)15:30~20:30
【会場】札幌市民交流プラザ3階 クリエイティブスタジオ(札幌市中央区北1西1)
2.「札幌AI道場 成果発表会」
○開会挨拶
冒頭、札幌市副市長の加藤氏から開会の挨拶があり、本プログラムに貢献した全ての人々へ感謝が述べられるとともに、プログラムに参加した門下生に向けて激励の言葉が投げかけられました。
―AI道場は実際の課題に向き合う実践の場。門下生の皆様が半年間で得た成果は、札幌、北海道、そして日本の未来を切り開く種になる。
―道場卒業後も、技術と気づきを職場に持ち帰り、AIを使った新しいことに挑戦し続けてもらいたい。

○来賓挨拶
続いて、来賓である一般社団法人日本ディープラーニング協会専務理事の岡田 隆太朗氏より、道場についての評価と期待が述べられました。
―道場は、座学だけではなくてPBL(課題解決型学習)を通じて、実践的なAI開発を学べる場であり、課題を提供した企業にとっても、AIの使用方法を実践的に学ぶことができる先進的な取組である。
―本日は、各チームの発表を聞けることを、とても楽しみしている。

○2025年度 取組紹介
道場の総師範である中村 拓哉氏(札幌AIラボ 事務局長 / 株式会社調和技研 代表取締役)より、札幌AI道場の概要や、今期の活動内容、道場の活動が国内・国外へと拡がりを見せていることなどが語られました。
―AI道場は今年で4年目を迎え、企業が抱える実際の課題を持ち込み、参加者(門下生)がそれをリアルに解決することを目指す取り組みである。教育と実装を分離せず、地域全体で実践的なAI人材を育成することを目指している。
―昨年の夏からバングラデシュで「日本AI道場」という取り組みがスタートした。日本の実際の課題を教材として提供し、海外との協力を通じた良質なAI人材育成を目指す。札幌で上流工程や設計を行い、連携して実装部分を進めることで、コスト構造を見直しグローバルなサービスの中で価値を生み出せる可能性がある。
―北海道は「フロンティアの地」として、否定せずに「やってみよう」と挑戦させてくれる素晴らしい環境である。地域に根差したローカルな課題解決への取り組みが国内外で注目され、世界的な市場を開く可能性が広がっている。
※AI道場の概要や、今期の活動概要等はこちらを確認ください。

○ユースコース(学生コース)成果発表
ユースコース(学生コース)では、座学や実習に加えて、AIを活用した新しいソリューション案の検討、実装を行ってきました。本セッションでは、ユースコースに参加した2名の学生が開発を行い、実際に「名寄青年会議所」にてプレゼンを行った「名寄仮想移住生活~村上春樹とともにめぐる名寄散歩~(※)」について発表が行われました。
※名寄市の過疎化と住民流出という課題解決を目的として開発したAIサービス。AIによる文体模倣を用いることで、村上春樹作品の舞台である名寄の風景を、物語の世界として体験することが可能。

〇エンジニアコース(社会人コース)成果発表
エンジニアコース(社会人コース)に参加した門下生からは、各チームが取り組んできたプロジェクトの概要と成果が発表されました。
エンジニアコース(チームA)
写真データを用いた郵便物通数集計による業務効率化(課題提供企業:札幌市豊平区役所)
■演習の概要:
現在、手作業で行っている郵便物の数量確認に「画像解析AI」を活用することで、迅速かつ正確に通数を確認し、作業の負担軽減と効率化を図る実証実験に取り組む。
■取組内容、結果:
単体の封筒画像からは約9割の精度で領域抽出するAIシステムの実証に取り組んだ。50枚の束やコンテナ画像では正解率や再現率に課題を残し実運用には精度向上の余地があるものの、画像分析による計数自動化の可能性は示された。今回の検証結果を活かした今後のモデル改善と、通数確認業務の自動化実現が期待される。

エンジニアコース(チームB)
AIを活用したヒグマ情報の提供 (課題提供企業:HBC北海道放送)
■演習の概要:
昨年、札幌市でも被害が大きかったヒグマの出没危険推定をAIによってエリアごとに行うことを目指す。AIで過去の出没傾向や地形や天候情報などの状況を統合的に判断し、モデルを開発することで主要因となる要素や予測状況を可視化することでヒグマ問題を考察する。
■取組内容、結果:
地形や植生、気象などの環境データと人為的要因を組み合わせ、1kmメッシュ単位でヒグマとの遭遇リスクを予測するAIシステムの実証に取り組んだ。約70%の正解率でリスクを予測できるだけでなく、『なぜ危険か』という根拠も定量的に提示でき、具体的な防除対策のシミュレーションも可能とした。

エンジニアコース(チームC)
地図情報更新を目的とした公開情報の変化検知支援 (課題提供企業:北海道地図株式会社)
■演習の概要:
各自治体および官公庁が公開しているウェブサイトを対象に、 施設の新設・廃止・名称変更など地図更新に関係する可能性のある変化を検知し、 更新確認作業を支援する仕組みの構築に取り組む。
■取組内容、結果:
生成AIを活用し、施設名から対象のWebページを特定して住所や電話番号を自動取得し、前年度データと表記ゆれを考慮して比較・突合するAIシステムの実証に取り組んだ。手作業で数時間かかっていた情報収集・差分抽出業務の時間を大幅に短縮でき、本格導入によって地図更新業務の効率化が期待できる。

エンジニアコース成果発表(チームⅮ)
自然環境調査を目的とした鳥の鳴き声検出(課題提供企業:株式会社開発工営社)
■演習の概要:
現地での目視や聞き取りによる種判別を、録音データをAIで自動解析して種別を特定する方法に置き換え、調査時の影響回避と効率化を図る。
■取組内容、結果:
長時間の録音データから鳥の鳴き声を自動検出し、解析時間を大幅に短縮するAIシステムの実証に取り組んだ。激しい環境音や小さな鳴き声の検出には課題を残したものの、追加学習等で検出漏れを減らすなど一定の成果を収めた。実用化に向けたさらなる精度改善と、自然環境調査の画期的な効率化への貢献が期待される。
エンジニアコース(チームE)
菓子製造における検品の効率化 (課題提供企業:長谷製菓株式会社)
■演習の概要:
菓子の生産ラインにおける目視検品の課題解決に向け、画像から焼き具合を自動判定するAIシステムの実証に取り組んだ。大鵬せんべいではテストデータで精度100%を達成。さらにラングドシャでは、コンベア上を流れる動画からの物体検出と焼き色判定においても高精度な結果を収め、実用化に向けた大きな手応えを得た。
■取組内容、結果:
菓子の生産ラインにおける目視検品の課題解決に向け、画像から焼き具合を自動判定するAIシステムの実証に取り組んだ。大鵬せんべいではテストデータで精度100%を達成。さらにラングドシャでは、コンベア上を流れる動画からの物体検出と焼き色判定においても高精度な結果を収め、実用化に向けた大きな手応えを得た。

○全体講評・トークセッション
道場最高師範の川村 秀憲氏(札幌AIラボ ラボ長 / 北海道大学大学院情報科学研究院 教授)、道場総師範の中村 拓哉氏、そして一般社団法人日本ディープラーニング協会専務理事の岡田 隆太朗氏にご登壇いただき、トークセッションが行われました。
ファシリテーターは、EmotionX株式会社 COOである大村 寛子氏に務めていただきました。
■テーマ:「地域を変えるAI、未来を創る人材」
(岡田氏)
―AI開発に関する技術的な創意工夫やプロセスを広く共有する札幌市の取り組みは素晴らしく、北海道の活性化に繋がると期待している。
―日本の人口減少という確定した未来に対し、「助けてAI」と言える国民性がある。将来に向けて今のうちから、AI開発に必要となるデータを取得していくことが重要である。
(川村氏)
―未経験でありながら、難しい課題に果敢に挑んだ皆さんの姿勢を高く評価する。
―北海道の強みを活かし、今後は「人が足りないからAI化しよう」という現状維持のアプローチではなく、AIを使って新たな付加価値を生み出し、売上を伸ばすためのAI活用を考えてほしい。
―コーディングができなくても物作りができる時代が来ている。AIと同じことをやっている人たちはAIに飲み込まれる可能性があるため、「守・破・離」の精神で、人々を幸せにする新たなAI創出を目指してほしい。
(中村氏)
―参加者が仕事終わりの時間を使ってリアルで難しい課題に取り組んだ姿勢に、大きな意義を感じる。変化の激しいAI業界で生き残るためには、新しいものに対応する姿勢が不可欠である。
―AI道場の参加者ネットワークを次なる展開に利用したい。札幌という地域が活動を生み出した背景には、人との出会いやネットワークを大切にする構造がある。この地の知の結集が地域を変える始まりになる。
―AIが全てを行う世界が目前にある中で、次に何ができるかにチャレンジすることが重要。海外の仲間たちと共に、AIの知識・スキルを保証する資格試験の英語版展開など、次なる飛躍へ繋げたい。

○クロージング
第1部の締めとして、再び川村最高師範に登壇いただき、プログラム全体を通じた講評をいただきました。

○懇親会
発表会終了後には懇親会が開催され、地域での異分野交流の場として多くの参加者が親睦を深めました。AI関係者や特定業界のみならず、異分野の人々が交流することで新しい化学反応を起こし、AIやDXを活用した新しい活動のきっかけとなることが期待されます。
○おわりに
「札幌AI道場・第4期」は、ご来場いただいた皆様をはじめ、多大なるご支援・ご協力を賜りました関係各位のおかげで、大盛況のうちに幕を閉じることができました。運営一同、心より御礼申し上げます。
現在、札幌AIラボでは、次なる「第5期(2026年度)」の開講に向けた準備を鋭意進めております。次期門下生のエントリーや実証課題の募集に関する最新情報は、決定次第こちらの公式ホームページ等で順次ご案内いたします。
札幌発のAI人材輩出と、地域におけるAI開発のさらなる飛躍に向けて、今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

長丁場のイベントを最後まで見届けてくださった皆様、誠にありがとうございました!




